【はじめに、すべての始まりとして】 (1/5ページ) |
誰かが小説を書く。誰かが小説を読む。
数百時間という膨大な時間を費やす「書く」作業に対して、「読む」のはほんの数時間の消化行為。食事の仕度と食器洗いの比ではないその溝は、立場を問わず小説執筆に挑むすべての人間の前に立ち塞がる。 |
文学賞に応募。落選、あるいはそこそこの成績。原稿埋没。コピーを増やしたくないという理由からくる限られた数の他人の意見。埋没。埋没。埋没。そういう風にして、僕はこれまでいくつかの小説を書いた。随分と褒められたものもあるし、たいした反応のないものもあった。それどころかまったく反応がないということもあった。僕の数百時間が無に帰したと思い知らされる瞬間だった。 |
あるとき僕はふと思った。
どうして僕は小説を書き始めたのだろうか? |
答えはこうだ。
いい小説が読みたい。
それが僕が小説を書き始めた動機だ。
いい小説が読みたいなら、自分で書けばいい。そう思って、僕は小説を書き始めた。 |
あれから数年が経ち、ようやく僕はここまでたどり着いた。
いま僕が望んでいるのは、本を出版することではなく、文学賞を受賞することでもない。
ただ、「小説を読んでもらう」こと。 |
気がつくと、目の前にウェブがあった。 |
続きを全部読む |